あなたが強いのはわかってる
でも、それ相応に弱いのも知ってるの

ずっと、私だけだと思っていた

あなたのことを一番近くでわかるのは

でも、もうすぐきっと変わってしまうね
あなたが振り向かなくなる日がきてしまうよね

だから、せめてそれまでは


あなたの一番近くで好きだと思わせてください




第四章 第四十一話   安穏はいつの日か




「カガリ・・・?」
おもむろに紡ぎ出された言葉は、格納庫を歩き回っている少女の名だ。
所在なさげにそこらを歩きまわっている。
近づいて方をたたくと、びくりと肩を震わせた。
その反応に、逆にが驚いてしまう。

「・・・?」
叩かれて初めてその存在に気づいたかのような声音だった。
いつも凛としている彼女らしくない、とは首を傾げる。
「どうしたの?」
「・・・っと、その・・・。危ないから・・・だからな、あの」
本当に彼女らしくない。

しどろもどろ話す声からはその真意は読み取れなかった。
「うん・・・?」
続きを促すようにしても、カガリは俯いたまま口を開こうとしない。
はっ、と顔を上げ、何か泣き寸前のような表情をし、遠くを見つめる。

そんなことを何度か繰り返した。
本気でどうしたものかとが悩んでいると、艦内を鈍い衝撃が襲った。

「っわ・・・」
「・・・!?」

その衝撃か、の驚きの声か、どちらに反応したのかは図りかねたが、カガリはいきなり面をあげた。
衝撃によろめたが前かがみになっていたため、自然と二人は衝突する形となる。

「った!?」
「・・・っつう」
結果、のおでこにカガリの後頭部がヒットした。
しばらく痛みに額を押さえていたは、いつの間にかカガリの姿が消えていることに気づいた。
咄嗟に周りを見渡せば、格納庫を出て行く彼女が垣間見えた。

痛さに顔をしかめつつ、はその後を追う。









「この艦はオーブに入る!だが撃つな!」
誰が聞いても無理難題な発言を、さっきまでうろたえていた少女はした。
凛とした普段の声が聞こえ、は安堵する。
でも、どうして
その理由はわからなかった。

突然の少女の介入に通信相手の仕官はいきりたつ。
「無理を言うな!今すぐ引き返せ!」
しかし、カガリも負けじと言い返した。
「この状況でよくそんなことが言えるな!・・・っお前では判断できんと言うなら行政府につなげ!」
「な・・・」
何者だ、と問おうとした仕官をカガリは遮った。

「父を・・・ウズミ・ナラ・アスハを呼べ!私はっ、」

思わず続けようとして、カガリはハッと口をつぐむ。
いつのまにやらその隣に来ていた大柄な男に目配せをした。
カガリの視線を受け、その男はしょうがないという風に肩で息をつく。

その一連の動作を見て、はようやく合点がいった。
やっぱまずいもんねぇ、と口の中で呟く。
そもそも父、と言ってる時点でバレバレだと思うのだが。

潔い彼女は迷いを振り切ったようで、大声で怒鳴った。

「私はっ・・・カガリ・ユラ・アスハだ!!」

含める3人以外、艦橋にいた人間はその衝撃発言にどよめいた。
それは向こうも同様らしく。

「なっ・・・!姫様がそんな場所にいるはずがない!」
「なんだとっ!?」

まぁ、確かに
いろいろと型破りなのは否定できないと思うが

逆上したカガリをなだめるように大柄な男が肩を叩く。
マリューに近づいて、呟いた。
「このまま領海に落ちろ。・・・なに、"上手く"やるさ」

そのまま、アークエンジェルは首尾よく中立国オークに入港することになる。
レドニル・キサカ一佐と名乗った青年は、オーブの獅子に会わせてくれるとも告げた。

すべてはその方に聞けばいい、と。










「まさか、カガリちゃんが姫だとは」
オーブの姫は"姫"と呼ばれると機嫌を悪くする。
「姫言うな。黙っていたことは・・悪かったけど」
キラはもう帰還しているだろう、とは格納庫に向かっていた。
その後をカガリがついて来ているのだ。

「別に良いよ。オーブの姫があんなとこにいるなんて普通言われても信じないし」
「おまえなぁ・・・」
笑ってが言うと、呆れたようにカガリは返す。
その背中を、叩く者がいた。

「−!」
ミリアリアが息せき切って駆けつけてきた。
「なんかっ・・はぁ・・・艦長、が呼んでる・・・。ウズミ様が、話があ、るんだ・・・って」
途切れ途切れにミリアリアが言う。
ウズミ様、とはもちろんここ中立国の国家元首・・・否、もと国家元首。
つまりオーブの獅子のことである。

「え・・・?」
「お父様が?」
思わずこぼした間の抜けるような声は、カガリのそれと重なる。
「ウズミ様が、私を・・・?」

そしてすぐ、は白亜の艦を離れなければならなくなった。

面談の理由を知るものは誰一人いない。
ただウズミが"・ヤマトに話がある"とだけ言ったらしい。
もちろん、に拒否権などあるはずもなく。

だが、アークエンジェルにが乗っていることをウズミが知る由もなかったことだけは確かだった。





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