神童は待っていた。
全てを知る青い炎の「闇」。それが神童だった。
神童は磨き上げたグラスを弄りながら待っていた。あまり来客の来ないこのBARで、
長い間、長い間待っていた。
カラン、とドアの鈴の音がする。
人の気配がするものの、その姿は無かった。
「…霧野」
神童はそう呼んだ。BARの中に、白い霧が立ちこめる。
−神童
何かが神童を呼んだ。神童はカウンターから出て、BARの中心で霧野の気配にまみれる。
「…霧野…」
神童が放つ青い炎に、霧が蒸発していく。神童は霧を集める様に両手をかき混ぜる。
「…霧野」
噛み締める様に何度も名を呼ぶ。神童は涙で目の前が見えなくなるのがわかった。
−また、会いに来いよ
霧野の声に、神童は頷く。
カラン、と音を立て、ドアが閉まった。
霧野の気配は既に無い。神童は溢れ出る涙を拭いた。
全てはわかっていた事だ。