熱い 視界が赤い 燃えている 何もかも 手を伸ばしても届かない 焼けていく 全てが焼けていく まって あの人の背中を見ていた 主 炎の記憶 それが夢である事は、すぐ分かった。 冷たい天井は、焼けていない。 一瞬呼吸が止まり、大きく息を吐いた。 あんな夢に見るなんて。 まだ頭が混乱している。 立ち上がり、廊下に続く襖を開けた。 冷たい空気に触れ、やっと脳が目覚める。 瞼を閉じれば、あの光景が蘇った。 「薬研?」 声に首を動かすと、審神者が居た。 「おぅ、大将」 いつもの調子で答える。 「薬研、大丈夫?」 いつもの調子のつもりだったのに、審神者は訝しげな顔をしていた。 「ん?別に大丈夫だ 審神者は薬研を抱きしめる。いきなりの事で、反応が出来なかった。 「ちょ、大将」 「全然大丈夫じゃないでしょ」 大将の温もりに、心がじわじわする。 「そんなこたねえよ」 「じゃあなんで泣いてるのさ」 言われて、自分の視界が歪んでいるのが分かった。 「大将、やめてくれ」 「やめないよ。薬研が泣き止むまで」 「そんなみっともねえ姿見せらんねえよ」 「みっともなくない。いつも薬研はこうしてくれるじゃないか」 審神者の腕の中は、温かい。 あの記憶が蘇り、薬研は審神者の背中に手を回す。 行かないでくれ あの炎の中で、失ってしまった。 自分自身と、大切な人。 次は護りきるんだと、決意していた。 でも、だから、いや、なんでこんな気持ちに、 「たまには泣いていいんだよ」 審神者に優しい言葉に、とうとう声を出して泣いた。 審神者の温もりが、じわじわと伝わる。 安心していた。安心して、腕の中に居た。 「たいしょお、たいしょお」 「もう嫌だ。死なないでくれ」 「置いて行かないでくれ。ずっと一緒に居てくれ」 「もう熱いのは嫌だ。燃えるのは嫌だ」 「大将が居なくなったら、嫌なんだ」 「ああ、置いていかないよ。もう、ずっと一緒だよ」 「たいしょお、たいしょお…」 薬研は泣いた。 今までで一番泣いた。 審神者はただ抱きしめていた。 薬研は泣き疲れて、また眠ってしまった。 審神者は薬研に膝枕をしている。安心したその寝顔を見て、小さく笑っていた。 意外な一面を見ちゃったなぁ。 いつだって弱い面を見せない薬研の、審神者にだけ見せた一面。 今はおやすみ 此処に炎は無いよ