一年後− 魔女は赤いドレスを纏い、城へ来た。 当然城門で門番に行く手を阻まれる。 「なんだ女!此処は通させんぞ!」 「あら、仕事熱心な門番さんだこと」 キリノはそう言いドレスのポケットからビンを取り出し、中身を門番に ぶちまけた。 「何を…す…」 門番はガシャリと倒れ込む。キリノは悠々と城の中に入った。 キリノは迷う事無く王女の部屋へ向かう。不思議と途中で誰とも出くわさない。 音も立てずに奥の部屋の前に立ち、その扉を開いた。 召使い達のざわめき、王冠を被った男の怒りの声、そして王女の呻き声が キリノの耳にとどいた。 「貴様…何者だ!!」 王の剣幕もものともせずキリノは悠々と話す。 「私はキリノ…東の森に住む魔女と言った方が分かるかしら?」 「東の森の…魔女!?」 その言葉に場はざわめいた。 「お前など相手にしている暇など無い!!直ぐに森へ帰れ!!」 王は頭に血管を浮かせながら言う。 「あら、そんな事言って宜しいのかしら。私が居ないと…その子は産まれない わよ」 キリノの言葉に王は堪忍袋の緒が切れた様で、怒鳴り散らしキリノの襟首を 掴んだ。 「あなた!!いいの!!」 ひいひいと息を上げながら王女は言う。 「しかし…!!」 「約束…したの…」 王がキリノのドレスから手を放すと、キリノは王女の寝ているベッドに 寄り添った。 「貴女の体では赤ん坊を産んでも直ぐに死ぬでしょう…それでも、いいわね?」 キリノの言葉にまた王が怒鳴ろうとする。しかし王女はそれを宥めた。 「この子が無事なら…私なんて…!!」 「話がわかる人で良かった。いくわよ?」 キリノが王女の腹を撫でると、王女は苦痛の声を上げ、血しぶきと共に赤子を 産んだ。 「ああ…産まれた」 キリノは赤子を手に取り、その両手とドレスを赤く染める。 「貴様…!!私の子供から手を離せ!!」 王が掴みかかってきたが、キリノはそれを避けた。 「王女と約束したわ。この子は私が育てると…。逸れより、王女の様子は 見ないの?」 キリノに言われ王ははっ、と意識を変え王女のベッドに寄り添った。 「ま…魔女…」 王女は最後の力どキリノに言う。 「その子の…名前…タクト…」 言い切る前に王女は事切れた。全員が王女に気が行っている間に、 キリノは赤子を抱えて部屋を出た。 赤子を大切に布にくるみ、まだ気を失っている門番の隣を通り、 城をあとにする。 「タクト…可愛い私の子供…」 赤子は泣いた。