「タネも仕掛けも無い…手品ですよ」 ミシェルが笑う ナイフが宙をくるくる回り、三人目掛けて落ちて来た 無数の刃が弾幕のように襲う しかし、ナカジとニッキーに怪我は無い 「に…さん」 それは目の前に立つヒグラシのおかげだった ヒグラシの手には歪だが、黒い鎌が握られている その鎌がナイフを弾き出したのだろう 「…ニッキーくんは、無事?」 鎌の形を変形させ、ミシェルと同じく無数のナイフにする 「なら、早く領域を操作して…ね?」 ニッキーが無言で頷いた 「無数の刃の弾幕…僕だって出来る、よ?」 黒いナイフの段幕がお互いを食い合う。ミシェルは翼で体を囲ってヒグラシの段幕を凌いだ。 「我、願うは混沌の力。世界を現に戻せ、審判の力!」 ニッキーが唱えると、球から波動が生まれ、世界の動きが止まった。 「よし…これで、領域化を止められた」 次はそれを正常にするだけだ、とニッキーが気合いを入れる 「なら、俺は兄さんの援護に行くわ」 ナカジがヒグラシの元に向かった ヒグラシもミシェルも体に大小様々な傷がある 「…互いに、次の一撃が勝負ですね」 「…だね、ミシェルさん」 じりじりと間合いを詰め、武器を構える その時だ 悲鳴が聞こえた ミシェルとヒグラシが声の方を向く そこには、黒い刀を持った六と肩を斬りつけられた文彦がいた 「文彦さん…きっ、貴様ぁあああ!!」 ミシェルが声を上げるが、六は濁りきった眼をミシェルの隣にいたヒグラシに向ける 「あー…ヒグラシだ」 六は文彦から興味を失ったらしく、ヒグラシの元に駆けていく 「ヒグラシ、ヒグラシヒグラシ俺探したんだ俺から離れるなよ心配しただろ?」 「…六」 「ヒグラシには俺しか居ないし俺はヒグラシしか要らないんだヒグラシが居ない世界は要らないから 壊してやる」 「僕は此処にいるよ、六と一緒だよ、だからもう止めようよ」 ヒグラシが半泣きになりながら言う。六を抱きしめると、二人の頭の上に「輪」が生まれた。 ふわり、と宙に浮く。六はヒグラシに何か耳打ちした。 「…え?」 鈍い音がし、ヒグラシの腹が赤く染まっていく。 「兄さん!!!」 ナカジは叫ぶ。するとヒグラシはずるりと地上に落ちた。 「う、ああ、あぁあああ!」 六が獣のように叫ぶ 六の腹を引き裂いて、中からジャックが現れた 「…コレも宿主にはなれなかったみたいだな」 「あー…ひぐ、…ひぐら…し」 「そんなに驚くなよ。神子は俺を体に宿して領域で一生生きるのが役目なんだぞ?」 不適当者は死ぬがな、ジャックが笑う 「お前…は…」 「俺はジャック。俺が 「世界」だ」 「…なん…だと!?」 ジャックの頭の上には輪が光っている。 「ろ…く…六ぅ…」 ヒグラシは腹を庇いながら六を呼ぶ。六はぴくりとも動かなかった。 「…お前が最後なんだな」 「ん?」 「お前を倒せば全て元に戻るんだな」 「そうだぜ。でもお前ぬ俺は倒せない。それは俺が強いからだ」 ナカジは鎌鼬を握り直す 「世界とかどうだって良い。壊れたってなんだってしちまえ!」 足を一歩前に踏み出す 「でもな、兄さんを泣かすヤツは許さない」 ジャックの攻撃が頬をかすめた 「兄さんが笑ってられない世界なら俺が壊す」 それでもナカジは前に進むのを止めない 「兄さんが笑っている世界は俺が守る」 ナカジの耳にヒグラシの泣き声が聞こえる 「謝れ」 「兄さんを泣かしたんだ。謝れ」 「自業自得…だっ!」 ジャックが腕を振ると、ナカジに向かって神風が起こった。 ナカジはそれを鎌鼬で受け止める。 「少しはヤルみたいだな」 ジャックは光の様な速さでナカジに詰め寄る。ナカジに向かって腕を振り下ろそうとした瞬間、 戦輪がジャックの腕に食い込んだ。 「油断大敵だよ…ばーか」 ニッキーがニヤリと笑った 「…クズか」 ジャックが指を鳴らす 光の矢がニッキーの腕を貫いた 「馬鹿はお前の方だなぁ」 「ぐっ…」 「ニッキー!」 ニッキーは腕を貫かれて動けない。それでも攻撃のチャンスを狙っていた。 「へぇ…まだヤル気?」 ニッキーを見ているジャックにナカジは切り掛かる。しかし髪を少し掠めただけで、 二人の視界から消えた。 「いい加減諦めろよ」 背後から声がする 次の瞬間、全身に痛みが走る 「お前らは勝てない」 やっとナカジは、ジャックに背後から攻撃を受けたことに気付けた 「世界にはなぁあ!」 ジャックが光の剣を出す 思わず目を瞑り、攻撃に備えた しかし、痛みが来ない 「ごめん、ナカジ…兄ちゃんちょっと落ち込んでたよ」 ヒグラシがナカジの代わりに貫かれていたのだ 「…一緒に死のうか、ゲス野郎」 ヒグラシが鎌を変形させ、無数の刃がヒグラシと共にジャックを貫く 「に……兄さーーん!!!!」 ナカジは地面にはいつくばりながら叫んだ。 ヒグラシは笑顔で崩れ落ちる。 「…ヒグラシ…」 光の槍から解放されたニッキーが二人に近づく。ジャックは無数の黒い刃物に貫かれ死んでいた。 「…残ったのは俺達と…」 肩を切られた文彦を担ぎいだミシェルが現れた。 「…僕達はもう戦いません」 「それに、神子の役割は終わったんでしょう?」 文彦がヒグラシの頭をそっと頭を撫でる 「ヒグラシくん…かわいそう」 文彦の肩の傷から球が出てきた。教皇の球だ。 「…もし球の力が使えたら…」 文彦は球をヒグラシの頭に当てる。すると球が光り、黒い刃物は無くなっていった。その代わりに ミシェルの羽根がはらはらと落ちる。 「…癒やしの力ですか」 ミシェルがそっとヒグラシの傷に触れる 「文彦、僕の力を貸しますよ」 羽がヒグラシの傷に触れると傷を癒やしていく 「もうこの領域に来ることは無い。全部使ってしまいましょう」 暫くすると、ヒグラシは目を開けた。 「あ…れ?僕、死んだんじゃ…?」 「教皇の力で生き返ったんだ」 ヒグラシは起き上がり辺りを見渡す。 そこで残酷な形で死んでいる六を見つけた。 「六!!六!!!」 ヒグラシは叫んで六の方へ行こうとした。しかし体がまだ言う事をきかなかった。 ヒグラシはしばらく茫然としていたが、ある決断をした 「…せっかく治してもらったけど」 ヒグラシが球を見せる 球の光は弱く、直ぐに消えてしまいそうだ 「僕を代価にすれば…みんなを元に戻せる」 ヒグラシが球を飲み込む。 するとヒグラシの体が光始めた 「死神の力、死と再生…僕の死で、みんなを元に!!」 「代価、って兄さん!」 ヒグラシの体から光が溢れ、領域中が光る。 「兄さん!兄さん!!!」 光となったヒグラシはにこりとナカジに笑う。 ありがとう−ナカジ でも、もう兄ちゃんが居なくても、やってけるよな? 「兄さーーーん!!!!」 あの事件の後、アルカナの影響は全て無くなった。 しかしの中庭には相変わらずアルカナの人間がやって来る。 竹中が毛利に話しかける。毛利は満更ではないようだ。 大谷はそれを見て三成と家康に耳打ちする。 お市と長政、DTOとハジメは目に痛いほどの仲で、 ニッキーは足を取り戻していた。 神子の出来事は皆の記憶から消えて、何事も無くなって とてもとても幸せで (何か、忘れてる気がする) ナカジは時々島を歩きまわり、何かを探す どこかに足りない何かがいるような気がして ずっと探していれば、見つかる気がした 「…ナカジ、何を探してんだよ」 ニッキーがナカジに呼びかける 「何か…探しもん?」 「探しもん…ねぇ」 ニッキーは砂浜に座りこみ、手で砂を取って遊んだ。 「きっと見つからないよ、その探しもん」 「え?」 「「此処」に居る限り…ね」 「何か知ってんのか?」 「さあ?そんな気がしただけ」 「ま、いいわ」 ナカジが立ち上がり、腕を回す 「俺な、見つからないなら仕方ないわな」 あっけらかんと言ったナカジは砂浜を後にする ニッキーが慌てて後を追う 「いつか何を探してたのか分かる気がする」 「ポジティブだなぁ、ナカジは」 元々あったかの様な足でニッキーは走る。 「なあナカジ」 「ん?」 「今度宿題写させてよ」 「仕方ねぇなぁお前は」 ナカジは笑う。なにもかもなかった様に。 ニッキーはナカジに抱き着く。二人はじゃれあいながら寮へ戻った。 あのね、ナカジ お前が探してるのは……… End