「ムカつくぐらいの可愛い寝顔ですね」

 目の前には、ベッドの上で頬を少し赤らめ、寝息を立てて寝ている男が居た。嫌味たらたらに発してやった言葉も、この男には聞こえさえしない。人が折角見舞いに来てやったのに、幸せそうな顔して寝やがって。段々腹が立ったあたしは、男の頬を抓ってやった。すると男は「っ、」と顔を顰め、目を覚ました。

「…あ、あおい……?」

 その男―――、幼馴染の生未いくみは、寝ぼけ眼であたしの名を呼んだ。あたしはまた再び、腹が立ったので「さいでっせ」と棒読みで言ってやった。

「態々お見舞いに来てあげました」

 嫌味っぽく言ってやった。つくづく思うけど、可愛くないな、あたし。


「うっわ、めっちゃありがた迷惑! ……まぁ、おおきにな、」

 驚いた。珍しく素直にお礼なんか言った。それとも、皮肉を言ってやったのに通じなかっただけなのか。

「……これ、色々買ってきといた」

 そう言って、あたしは生未の家に来る途中に寄った、近所にあるコンビニで買った物が入った袋を差し出した。即座に生未は、袋に手を突っ込み、少年誌を取り出して「あっ! ○ャンプ今日発売やったっけ!」と声を上げた。
 生未はそのまま、買ってきた雑誌を読み始めた。何だ元気じゃん…。来るんじゃなかった。そんな事を思いながら、ある事に気付いて尋ねる。

「風邪?」




「…そういえば、おばさんは?」

 そういえば、音沙汰もない。病人放っておいて何処行ったんだろうな。まぁ、あたし達ももう高校生だし、風邪ぐらいで心配もしないだろう。

「出掛けとるんやろ? そないなことよりこの漫画! 今回もおもろいわ〜」








 はぁ。「やっぱ元気じゃん………」

「何か言うたか?」

「何でもありませんよ」























「辛いお気持ちは分かりますが、どうか元気になって下さい」

 隣の運転席に座っていた が言った。私は車の助手席に座っていた。

「 さん」

 聞きたいことがあった。私は問うた。

「彼は、生未いくみは死んじゃったんですか」

 長い沈黙が訪れる。

「…遊菜さんの所為ではありませんよ。あれは、事故ですから」

 私は泣きたい気持ちでいっぱいだった。





『俺達付き合わね?』



















「誰か待ってんの?」

 声が聞こえて振り向くと、






















「悪ィ――春川はるかわ!」

 ガラガラと音を立てて開くドアに、加えて勢いよく開けた反動で桟が擦れてピシャンと大きな音が鳴る。更に張り上げた男の怒鳴りに近い声音。予期もしないことに春川遊菜ゆなはとても驚いた。急なことでは心臓に悪い。










 奇しくも、永瀬 生未ながせ いくみと隣の席になってしまった。
 女の子みたいな名前してるくせに、中身はちゃんと男の子だし、背もそんなに高くないくせに顔だけは可愛いから女子には人気だし。
 昨日の放課後、永瀬に告われた。『好きだ』なんて。





「こないだの返事は?」

 少し動揺した。「何のこと」

































「だ、って…嫌だったんだもん」

 「何がだよ」

「今までみたいに居られなくなっちゃうの、嫌だったんだもん」

 本当の気持ちだった。

「バァカ」

 そう言って生未は、遊菜の頭を撫でた。





















ハロー ハロー、
ぼくらの憂鬱。



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