『拝啓

おかしな天気が続いておりましたがようやく暑さも本番。
夏がきましたね。セミの声もジワジワと日がたつごとに大きくなり、
まるでお祭りのようです。

さて、このたびはお手紙ありがとうございました。
突然のことで驚きましたが、あなたからの手紙はこの上なく嬉しく、
あの賑やかだった1年がすぐに私の頭によみがえりました。

あなたが卒業して、もう何年たつのでしょうか。
あのクラスでの出来事は忘れようがありませんね。
学園祭、運動会、授業中の居眠り、今でも笑い声まで鮮やかに思い出せるのは
私自信もあなたと同様、楽しかったからに違いがありません。
みんな元気なのでしょうか。会いたいものです。

どうかまた、こちらにも遊びにきてくださいね。
何年ぶりかに顔突き合わせて、存分に飲もうではありませんか。
それでは、夏バテなどにはお気をつけて。
                                   かしこ』

*****

「ばかみてーだなおい。」

無言で隣り合い、まだ細い君の指をなぞるだけで苦しかったのは、
あれも夏だったからだろうか。
今も鮮やかに 笑い声まで怒鳴り声まで忘れることができないのは
暑さで頭がやられているからだろうか。

何も言えなかったこと、今もやはり何も言えないことが悔しくて
住所まで書いた手紙をやぶり捨てた。

風が止み、夏の暑さでぬるくなった室内、
壊れかけた扇風機のスイッチをまた二度三度押してみた。
カチカチと無言で押し込むが何も動かない。

「ばかみてーだな。おい」


燃えるゴミと書かれた袋からかさりと白い断片がこぼれ落ちた。


―遠くの記憶―

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